膝の手術と筋力強化?
- ryoutakuan
- 9月30日
- 読了時間: 7分
更新日:10月5日
今回は、当院に来られている患者様のお話です。
9月のはじめのある朝、お電話がありました。
「今から診てもらえませんか?」
「あ、大丈夫ですよ。どうされました?」
「いや、一週間くらい前から、朝動けないくらいお尻から太もも裏側にかけて痛くて」
「了解です。けど、とするとコチラまではどうやって・・・」
「いえ、今くらいの時間になると幾分かは落ち着いてきてて、何とか動けるんですよぉ」
自分の中ではこんな音がします。

「ピン!」と。
で、ある程度の症状の原因が想定されるのですが、とは言えやはり、実際にはお姿を診させていただかないと・・・
「了解しました。じゃ、気を付けてお出でてくださいね」
ということで、ご来院。70代のシャキシャキしたどちらかと言えばふくよかな女性です。

お聞きすると、10月に左膝を人工関節にする手術を控えられているとのこと。
身体を動かすのがお好きで、週の内6日くらいはジムに通ってらっしゃったり、温泉でゆっくりされているそうです。
また、ご自身の体の手入れにも気をつけておられて、整体やリラクゼーションなどにも定期的に通われてらっしゃるとのこと。
ひと言で言うなら、すっごい元気なお母さん!です。
しかし、左膝は手術をしなければならないくらい、以前から痛みがあったそうです。
お見受けする限りでは、これといった変形はなく、歩くお姿もいたって普通といった感じです。ただ、立ったりしゃがんだりすると結構痛むんだそうです。
そんなお母さんが一週間くらい前から、決まって朝起きた時にお尻から太もも裏側にかけての激しい痛みに襲われていらっしゃる。症状的にはいわゆる「坐骨神経痛」です。

「朝(6時頃)起きてトイレに行こうにも、這ってでじゃないと動けないの」
「けど、しばらく(2時間くらい)すると、こうやって動けるのよね」
「でね、これから左膝の手術するでしょ。右のお尻がこんなで、両方が痛みで歩けなくなったらダメじゃんと思ってジムには行くんだけど、翌朝になったらまぁた痛くて痛くて・・・」
ここまでお話をお聞き出来たら、こっちのもんです。お電話で「ピン!」と来たのが、ほぼ確証に変わります。
「じゃ、いくつか検査させてもらいますね。けど、『あ、その動作や姿勢、イヤだな』と思うようだったら遠慮せずおっしゃってくださいね。それがすごいヒントになったりしますから」
で、検査。ルーキー時代の松坂大輔君の言葉をお借りするなら
「自信が確信に変わりました」
です。テヘペロ。

しかし、気になったのは患者様のこの言葉です。
「両方が痛みで歩けなくなったらダメじゃんと思ってジムには行くんだけど」
ここで詳しくは触れませんが、私とすると、出来ればジムに行くのはやめて欲しいんです。今、わざわざトレーニングをするのは朝の痛みが改善することに全く役に立たないどころか、かえって悪影響だと考えるからです。
だもんで、なるべく言葉を選んでお聞きしました。
「けど、こんな車に乗り降りするだけでも結構おツライと思うのに、なんでわざわざジムに通われるんですか。ちょっとの間、お休みされてもいいんじゃないかなって思うんですけど・・・」
「そうなんよね。ま、今までずーっと習慣になってた言うのもあるんやけど、お医者さんから言われたんよ。『手術の後はしばらく今までみたいに歩けないから、筋力つけといてね』って」

自分の中で、今度はこんな音・・・いや、声がしました。
「はぁ?」

〇〇さんは今までずーっとジムで体を動かされてます。触らせて頂いた所、年齢を思うと筋肉はしっかりされています。なのに、お医者様が「筋力つけといてね」て。
〇〇さんにお伝えしました。
「けどね、仕事柄多くの人のお体を診させてもらって触らせてもらってますけど、○○さんの脚の筋肉はじゅうぶんしっかりされてますよぉ」
「そうなん?けど、お医者様が言うてたから」
残念ながら(というか、悔しいですが)こう言う場合、お医者様の意見の方が強いです。社会的信用度ってヤツですね。
ただ、またまた頭の中で音がしました。

「ピン!(その2)」と。
「あ、一つ聞いていいですか?お医者様がそうアドバイスされる前に、
お医者様は○○さんの太もも触られました?
もしくは、リハビリの先生なんかが筋力テストとかされました?」
「・・・そういや、した覚えないねぇ」
「やっぱり。多分それって、そのお医者様は手術される患者様にいつもお話されてるアドバイスなんやと思いますよ。普通に生活されている70代の女性一般の方に通じるアドバイスではあるんですが、〇〇さんみたく常日頃お体を動かされている人には、ボクは当てはまらないと思うんです。だもんで、2週間でいいです。ちょっと、ジムをお休みされません?」
「えぇ、けど、それで筋力落ちたりするんじゃない?で、歩けんなったらイカン思って行きよるんじゃけど」
「もちろん、鍛えた筋肉って続けないと落ちます。けどね、日常生活で必要な筋力ってそうそう簡単には落ちないから心配せんでええですよ。インフルエンザで一週間寝込んだ子供、治ったら走り回るでしょ?」

「そういや、そうやね。けど、2週間じー―としとかなアカンの?」
「いやいや、そうじゃないんです。実は(以下、結構な企業秘密だったりしますので、ここでは略^^)」
「ほうなん。分かったわ。でも、1週間じゃダメぇ?」
(・・・ぐぬぬ、しぶとい)
「わ、分かりました。じゃ、1週間にしましょ。で、1週間後の様子でまた判断させてくださいね」
「ありがと。じゃ、次はいつ来たらええ?」
「そうですね、じゃ(・・・)」
ということで、○○さん。
なんとか頑張ってジムを休んでいただいた事もあって、朝の痛みが随分解消されてました。
(頑張って休む?ま、ええかw)
元々筋肉がしっかりされてたから、2週間はかからないかな?とは思ってたんですが(という、後出しジャンケンです^^;)

お医者様にクレームというワケではないのですが、お忙しいとは思うのですが、手術のお話をされるのであれば、せめてもう少しその方の背景に関心を持っていただけないでしょうか?
それ以上に、こういう○○さんのような患者様が来られた時の同業者さんにも同じ問いかけをしたいと思います。特に、○○さんに対して
「○○さんは骨盤が歪んで神経を圧迫して・・・云々かんぬん」
というような事をヌカス、いえ、おっしゃる同業者さんに^^;。
左膝がツラいのに、一生懸命体を動かし鍛えていた○○さん。左右均等に、いや、左脚に体重かけて頑張るでしょうか?
長年、スポーツジムに通われてた○○さん。長年通うことになる前や通い始めた当初のお体と今の70代のお体で大きく変わったことはありませんか?
その状況で、同じような運動をし、同じように通われているとしたら、トレーニングの後で身体にどんな変化が起こりますか?
朝激痛で動けないのに、時間が経つとなんとか動けるようになる○○さん。その状態でジムに行って体を動かして、翌朝どうなると思います?
このお医者様のおっしゃられた
「筋力つけといてね」
というアドバイス。もう少し○○さんに目を向けてらっしゃったら口にされなかったのではないでしょうか?
ま、前回のブログで触れた同業者の「骨盤の歪みがー!」を思えば、全然真っ当なアドバイスではありますが。

おわかりいただけたかと思いますが、今回のタイトル「膝の手術と筋力強化?」は、決して膝の手術のために筋力強化は必要ないと言っているのじゃありません。
もう少し目の前の患者様の背景に目を向けましょう、ということです。
ちなみにお膝に関しては苦手な自分なので、手術が目前に迫っている今になって強くは言えませんでしたが、痛みの起こり方や場所をお聞きすると、
「もしかしたら、手術する前に施術する手もあるんじゃないかな?」
みたいな気持ちにもなってはいるのですが、○○さんが決断された事ですから余計な事は言わずに応援しようと思っています。
もちろん、相談されたらお応えしようとは思いますよ。
